──約15年前、国連軍入隊式にて。
司会 | 続いて、宣誓を行います。 代表者、アシュレー・サガン、前に。 | アシュレー | はい。 私たちは、世界の平和と秩序を守る 国連軍として── | 国連軍兵士A | (おぉ……あれが世界帝のご子息か……。 志望して軍に入ったって聞いたぜ) | 国連軍兵士B | (飛び級で大学に入って主席で卒業した 秀才だろ? 引く手数多だったろうに、 立派なもんだな) | アシュレー | ──の象徴たる世界帝への忠誠と尽力を、 ここに誓います。 ……礼! |
世界帝 | アシュレー。 | アシュレー | あ……、父さん。 | 世界帝 | 入隊式での宣誓、立派だった。 これは、私からの入隊祝いだ。 | アシュレー | ありがとうございます。 ……とても洒落た拳銃ですね。 少し古い……20世紀初頭のものですか? | 世界帝 | そうだよ。私が若い頃、 知り合いから譲り受けた特注品だ。 大事にしなさい。 | アシュレー | はい。有難く頂戴します。 | 世界帝 | では、明日から軍務に励むように。 | アシュレー | ──父さん! | 世界帝 | ……なんだ? | アシュレー | 僕はずっと、父さんの理想を── 争いのない、完全なる平和世界実現の 助けになりたいと、強く思ってきました。 | アシュレー | 今日はようやく、念願が叶い…… この胸は、未来への希望と喜びに 満ちあふれています。 | アシュレー | 父さんと母さん、 そして平和を愛する民衆のため── このモーゼルと共に、邁進いたします! | 世界帝 | ……期待している、我が息子よ。 | アシュレー | ──はい! |
国連軍兵士A | 急げ! この街にサガン少佐が視察に 来られるぞ! お迎えしなくては! | 国連軍兵士A | 万が一に備え警備網を敷くんだ! | 国連軍兵士たち | はっ! | アシュレー | いい街だ……。 この景観を瓦礫の山にするのは 忍びないと思っていたよ。 | 国連軍兵士 | サガン少佐に敬礼! | アシュレー | 君たち、ご苦労。 占領統治の具合はどうだい。 | 国連軍兵士 | はい、概ね順調です。 ただ郊外にはまだレジスタンスの残党が 潜んでいるとの情報があり、捜索中です。 | 国連軍兵士 | 市街地でもしばしば反抗的な住民との 衝突が生じ、すべて収監しております。 | アシュレー | ふっ、収監ね。反抗勢力をわざわざ 収監してさしあげるとは、父さんも甘いな。 全員極刑で構わないだろうに。 | アシュレー | 視察の間、モーゼルに汚い血を 流させることもあるかもしれないね。 | 国連軍兵士 | モーゼル……と言いますと、 半世紀前の拳銃でしょうか……? | アシュレー | そうだ。入隊祝いに父からもらった 僕の愛銃なんだ。 見せようか、ほら──美しいだろう? | 国連軍兵士 | なるほど……しかし、性能としましては、 その……最新の銃を使用された方が よろしいのでは……? | アシュレー | またそれか。 側近にも散々言われているが、 僕の相棒はこのモーゼルと決めている。 | アシュレー | 軍人としての始まりの日から、様々な経験を 共にしてきた。それはこれからも、 理想の未来を築くまで変わらない。 | 国連軍兵士 | は、はあ……。 | アシュレー | いい街だ。 母さんを案内してあげたいなあ……。 |
この数日後、アシュレーの母親は レジスタンスの暴徒によって殺害される。
事件をきっかけに、アシュレーの レジスタンスに対する弾圧の姿勢は 苛烈を極めていった。
その頃、核戦争跡地で未知の鉱石が 発見される。のちに、核に代わる強大な エネルギー源であることが明らかになり、
反乱勢力に対する制裁の切り札とするべく、 アシュレーらは新たな鉱石を使用した 爆弾の研究を密かに開始した。
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